自動小銃の連射音が響いた。同時に女性の悲鳴が上がる。
「新田、菊川」
京村奈緒は叫びそうになって、口を閉じた。敵ならば自分の存在がばれる。
彼女たちのことは心配だが、戦場では自分の身を守るのがまず第一だ。
再び連射音がした。
「待って、神代どうして」
苦しそうな女性の声は菊川だろう。
「やめてぇ、南条、殺さないで。助けて」
新田の声に間違いない、そして確かに神代と南条と言った。
聞き間違いではない。
それでも信じられない、理由がわからない。
菊川涼、新田美玖、神代さつき、南条郁は自分と同じ海上自衛隊K教育隊の新入隊員だ。
知り合って、たった四か月ではあるが、朝から晩まで苦労を共にしてきた。
ほかの仲間を含めて十四名は、端艇訓練の途中でこの世界に飛ばされた。
そしてバラバラになって行動を初めたのが一週間前。
とにかく、何がなんだか分からないまま今日になった。
そして今、仲間だったはずの南条と神代に、殺されかけようとしている。
こんなところで訳の分からないまま死ぬのは嫌だ。
拳銃の発射音、断末魔の叫び、スイカがはじけるような音。菊川か新田のどちらかが、頭をぶち抜かれたのだ。
「助けて、死にたくない、なんで」
新田だ、となると菊川はもう殺されたということか。
再び自動小銃の連射音、女性の断末魔の甲高い悲鳴。
京村は膝が抜けそうになった。
本当に二人なの、髪が銀髪になってはいるが、二人に間違いはなかった。
何か月も一緒に暮らしているのだ、見間違えようがなかった。
京村は突如気が付いた、逃げなきゃならない。逃げなければ殺される。
脚に力が入らない、自動小銃は二人のところに置いたままだ、持っていきなと言われたのを、重いからと置いてきたのだ。
Tシャツとミニスカという姿で自動小銃は似合わない。
腰のホルスターに拳銃はささっている。
でも拳銃で自動小銃には勝てない。射程も威力も違いすぎる。武器学の成績が最低の京村でも、それくらいはわかっている。
「京村、あきらめろ」
神代の声だ。京村は、自分の存在がばれていることを悟った。
発射音が響き、体のわきに土煙が上がった。
「きゃあ」
股間が温かくなった、恐怖で漏らしてしまったのだ。
南条と神代がニヤッと笑ったのが見えた。
神代が自動小銃を肩付する。銃口はこっちに向いていた。
「やめて、どうしてこんなひどいことを」
連射音がした、京村は思わず目をつぶってしまった。
菊川の白いからだが、毛むくじゃらの男に組み敷かれている。男は彼女の豊かな胸を揉みしだきながら、腰を激しく動かしている。
新田からは菊川の顔は見えなかった。自分に見られたくはないのだろう、と思った。
声も押し殺しているのか、きっと涙も乾いているだろう。ダッチワイフそんな言葉が、ふと菊川の頭に浮かんだ。
もっともそれは、自分も同じだと新田も思った。彼女も今、後ろから犯されている最中だ。
自分の『まんこ』は便器と一緒だ。単に男の汁を排せつされる。それだけのものになっていた。
男の『ちんこ』が、自分の中で激しく動いている。膣の中を太く硬いものが動いているが、感じることはない。
犯されている、それだけのことだ。今日はもう六人目、感覚も痛みもなくなっていた。
生で出されたものの始末をする前に、次の『ちんこ』が入ってくる。
ここはどこだろう、西部劇に出てくる売春宿のような建物にいることだけは、知っている。
日の当たらない部屋、丸太が組み合わされただけの部屋。
調度品は円卓と椅子、そして男に犯されるためのベッド。
トイレとシャワーは、同じ階に別の部屋がある。
食事は当たるが、男たちを拒むことはできない。
断ったら本当に死ぬほど殴られた後、数人の男にレイプされ、『まんこ』と肛門に、そこらにある、あらゆるものを突っ込まれた。
大戦中の独軍が使っていた、手りゅう弾を突っ込まれたときは失禁した。
腰を動かさなければ、ピンを抜くといわれ、ニタニタと下卑た顔の男たちの前で、オナニーを強要された。
屈辱だった。
それでも粉々になるよりはましだった。
胸を揉み、親指と人差し指で乳首をつまむ。
手りゅう弾の弾頭はさすがに『まんこ』には入らない。
『まんこ』が裂ける、押し込まれ泣き叫んだ。
男たちが馬鹿笑いし、擂粉木を突っ込まれた。
「うごかせよ、豚女」
男たちが次々と汚い言葉を浴びせる。
菊村のプライドと精神は粉々にされた。
犯されるだけならまだよかった、口の中に小便を出されたこともあった。
玩具にされても生きていた。死ねなかった。
神代と南条に撃たれた時の痛みと恐怖、は思い出しても体が震えてしまう。
死んだはずだった。いや確実に死んだはずだ。
それは、もしかすれば夢かもしれなかった。気が付けば、この部屋にいた。
素っ裸の体の上には、汗臭い男がのしかかっていた。
男の『ちんこ』が『まんこ』の中で動いていた。
その男が終わると、裏返され別の男が尻を抱え、『ちんこ』を挿入してきた。
「お前たちはここで、男に抱かれ続ける」
金髪の美少年が、犯されている菊川と新田に向かって宣言した。
彼はマークと名乗った、ここのボスらしかった。
そして、どうやら神代の男らしかった。
いや神代がマークの女なのかもしれない。
マークに従うようになれば、そのうち戦いにも出してやると南条に言われた。
彼女はどこからか連れてきた少年たちを、取り換え、自分の男にしていた。
少なくとも、新田達よりは楽しい生活をしていた。
出すものを出した男たちは、満足げな表情を浮かべ、部屋を出て行った。
今日はもう終わりなのだろう。部屋は新田と菊川の二人だけになった。
「死にたい、もういやこんなの」
菊川が泣きながら叫んだ、新田も同じ気持ちだった。
しかし、おそらく自分たちは死ぬこともできないのだ。
マークは何度でも自分たちを生き返らせるだろう。
なら、せめてこの部屋から出て、あの男ども殺してやりたい。そのためには、マークに従うふりをしようか、新田はそんなことを考えていた。
爆発音と発砲音がした。
「菊川、聞こえた?」
「うん、もしかしたら救援かな」
「誰が」
そうだった、自分たちがここにいることなど、きっと誰も知らないに違いない。
なまじっかの期待は、より絶望感を増す。
新田はここに来てから夢も希望も持たないことにした。
馬鹿どもが大騒ぎしているのかも、いやきっとそうだろう。
いきなり、扉が蹴破られた。
「菊川、新田、生きてるか」
和島のあ、だった。
「和島、助けに来てくれたの」
「うん、だから、死んで」
和島の持つ自動小銃の銃口が、自分に向いたのを菊川は見た。
「ま、待って」
発砲音と、全身に焼け火箸を突っ込まれるような感覚。またか、その想いとともに、新田の意識は途絶えた。